ジビエの中でも人気が高いのが猪肉です。猪肉に興味はあっても、独特の風味や硬さが気になり、挑戦をためらう方は多くいます。この記事では、猪肉の基礎知識から下処理の手順、おすすめの調理法について、看護師として働きながら狩猟者として地方で活動する、たんケモちゃんが実践を踏まえて解説します。記事を読めば、猪肉の扱い方がわかり、初心者でも手軽に調理が可能です。
猪肉の臭みを抑えるには、血抜きやマリネが重要です。適切な調理法を知り、おいしく楽しみましょう。
猪肉の基礎知識

猪肉の基礎知識として、特徴と栄養価を解説します。
猪肉の特徴
猪肉は、家畜肉とは異る旨味と風味を堪能できる、ジビエならではの魅力ある食材です。肉の色は赤色からワインレッドのような濃い赤色。赤身と脂肪のバランスが良く、噛みごたえのある肉質が楽しめます。脂身は自然な甘みがあり、コラーゲンたっぷりで、煮込み料理ではプルッとした食感が楽しめます。
自然界で活動し季節の野山の恵みを食べて育った猪は、味も風味もいわゆる普通の豚肉とは別格です。野生動物のため獲れた年齢や季節により個体差があります。野生の猪ならではの個性的な味わいを最大限に引き出すには、適切な下処理が欠かせません。
猪肉は、アウトドア料理や地産地消を楽しみたい人、健康志向の人におすすめです。
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猪肉の栄養価
猪肉は栄養価が高く、健康的な食材として注目されています。牛肉や豚肉に比べてタンパク質が豊富で、低脂肪な点が特徴です。主な栄養素は以下のとおりです。
- 鉄分
- ビタミンB1
- 亜鉛
- コラーゲン
- カリウム
鉄分は貧血予防に効果的で、ビタミンB1は疲労回復や代謝促進に役立ちます。亜鉛は免疫力維持や味覚の正常化に、コラーゲンは美肌や関節の健康維持に貢献します。カリウムは、高血圧予防に効果的です。ナイアシンやビタミンB6も豊富です。猪肉は血行促進や皮膚の健康維持、タンパク質代謝や免疫機能向上に役立ちます。
猪肉の下処理手順

猪肉の下処理手順は以下のとおりです。
- 解凍
- 血抜き
- 筋の処理とトリミング
解凍
猪肉の解凍は、安全でおいしく食べるために欠かせません。最適な方法は、冷蔵庫での自然解凍です。冷凍庫から取り出した猪肉を清潔な容器に入れ、冷蔵庫でゆっくり解凍しましょう。厚さ2.5cmの肉片なら、24時間かかります。急ぐ場合は流水解凍も可能ですが、ドリップが出やすくなる点に注意が必要です。
電子レンジ解凍は肉質が変わるため、避けましょう。解凍時は清潔な容器を使い、出てくるドリップ(肉汁)をこまめに処理してください。完全に解凍してから調理を始めましょう。解凍後は速やかに調理し、再冷凍は避けるのがおすすめです。
血抜き

血抜きは、猪肉の下処理で重要な工程です。プロが処理を行ったジビエ肉はほとんど血による臭みを感じることはありませんが、気になる場合は、臭みを抑え、おいしく調理できる方法です。
大きなボウルに冷水を用意しましょう。水1リットルに対し塩大さじ1を加えます。猪肉を浸し、2〜3時間置いてください。30分〜1時間ごとに水を交換します。血抜きをすることで、臭みや雑味を取り除けます。
血抜きが不十分だと風味が損なわれるため、しっかり行いましょう。代替方法として、牛乳やワインに浸す方法もあります。血抜き後は、肉の水気を拭き取ることが大切です。
筋の処理とトリミング
猪肉をおいしく調理するには、筋の処理とトリミングが欠かせません。食感や味に大きく影響するため、丁寧に行いましょう。硬い筋や余分な脂肪を取り除くと、食べやすさが向上します。肉の繊維に沿って切れば、柔らかい食感になります。銀皮(筋膜)の除去も重要です。薄い膜を丁寧に取り除くと、肉が柔らかくなります。
均一な大きさにカットすると、調理時間のムラを防げます。余分な血液や不純物は取り除きましょう。肉をたたいて柔らかくするのもおすすめです。表面に骨片や毛が残っていないか確認し、あれば除去しましょう。用途に合わせた大きさにカットし、筋が多い部位は薄切りにすると調理しやすくなります。
猪肉の臭みを消す下処理方法

猪肉の臭みを消す下処理方法は、以下のとおりです。
- マリネで臭みを消す
- 香辛料を使用する
マリネで臭みを消す
マリネは、猪肉の臭みを抑える効果的な方法です。酢やワイン、レモン汁などの酸味のある液体を使うと、臭みが和らぎます。マリネ液に漬け込み、冷蔵庫で2〜4時間置きましょう。肉の厚さや大きさに応じて時間を調整してください。より効果を高めたい場合は、12〜24時間漬け込むのがおすすめです。
漬け込み後は水気を切り、調理前に軽く塩をふります。マリネ液は捨てずに取っておくと、調理時に活用できます。プラスチック容器やジップロックを使うと便利です。マリネは臭みを抑えるだけでなく、肉を柔らかくする効果もあります。
香辛料を使用する
香辛料は猪肉の臭みを抑えるだけでなく、風味を豊かにします。猪肉に合う香辛料は以下のとおりです。
- ニンニク・ショウガ・コショウ
- ローズマリー・タイム・セージ
- カレー粉・ガラムマサラ
- クローブ・シナモン・ナツメグ
- 唐辛子・チリパウダー
- フェンネルシード・クミン
- バジル・オレガノ
- 山椒・山菜
香辛料は調理前にすり潰すか、炒めて香りを引き出しましょう。肉に直接すり込むか、マリネ液に加えます。組み合わせを工夫すると和風や洋風、エスニックなど多彩な味わいが楽しめます。
猪肉を柔らかくする下処理方法

猪肉を柔らかくする下処理方法は、以下のとおりです。
- 酵素を含む果物を使用する
- 塩麹に漬け込む
酵素を含む果物を使用する
猪肉を柔らかくするには、酵素を含む果物を使いましょう。果物の酵素がタンパク質を分解し、肉を柔らかくします。代表的な果物と酵素は以下のとおりです。
- パイナップル
- キウイフルーツ
- パパイヤ
- イチジク
- マンゴー
- メロン
果物を使う際は、すりおろしてペースト状にし、猪肉と一緒に密閉容器に入れて漬け込みます。漬け込み時間は30分〜2時間が目安です。長く漬けすぎると肉が崩れるため注意してください。猪肉の固さが気になる方でも、食べやすく仕上がります。
塩麹に漬け込む
塩麹に漬けると猪肉が柔らかくなり、うま味が引き立ちます。肉の重量の10%程度の塩麹を塗り込み、ビニール袋に入れて冷蔵庫で一晩寝かせましょう。漬け込み後は軽く水洗いし、キッチンペーパーで水分を拭き取ります。長時間漬けると塩辛くなるため、注意が必要です。薄い肉なら4〜6時間ほどで十分です。
塩麹漬けの猪肉は焼き料理や煮込み料理に向いており、家庭でも簡単に調理できます。
猪肉におすすめの調理法

猪肉におすすめの調理法は以下のとおりです。
- 蒸し料理
- 煮込み料理
- 焼き料理
蒸し料理
蒸し料理は、猪肉のうまみを逃さず調理できる優れた方法です。低温でゆっくり蒸すことで、肉が柔らかくジューシーに仕上がります。猪肉本来の味を楽しめるうえ、脂肪分を落としてヘルシーに仕上げられ、臭みも抑えられます。蒸し器や土鍋、フライパンを使えば簡単に調理でき、アウトドアでも実践しやすい方法です。
香草や野菜と一緒に蒸すと、風味が加わります。蒸し時間は肉の厚さに応じて調整しましょう。仕上げに表面を軽く焼くと香ばしさが増し、おいしくなります。蒸し汁はソース作りに活用するのがおすすめです。
煮込み料理

猪肉の煮込み料理は、風味と食感を最大限に引き出せる調理法です。低温でじっくり煮込むと固い筋肉繊維がほぐれ、柔らかく仕上がります。肉を一口大に切り、表面を焼いてうまみを閉じ込めます。次に根菜や香味野菜を加えて風味を豊かにしましょう。
トマトや赤ワインなどの酸味のある食材で臭みを抑え、スパイスや香草で香りをつけます。煮込み時間は2〜3時間が目安ですが、圧力鍋を使えば短縮が可能です。仕上げに塩コショウで味を調え、小麦粉やコーンスターチでとろみをつけると、本格的な味わいになります。
煮込み後に一晩寝かせると、味がなじんでさらにおいしくなります。
焼き料理
猪肉の焼き料理は、風味と食感を最大限に引き出せる調理法です。高温で素早く焼くことで肉汁を閉じ込め、ジューシーに仕上がります。グリルやバーベキューに適しており、アウトドア料理としても人気です。
焼き料理を成功させるポイントは以下のとおりです。
- 焼く前に肉を室温に戻す
- 牛乳やタマネギソースでマリネして柔らかくする
- 香辛料やハーブで風味をつける
焼き過ぎに注意しましょう。焼いた後は数分間休ませると、よりおいしくなります。薄切り肉は焼肉にも適しており、ロースト調理もおすすめです。野菜と一緒に焼けば、栄養バランスの良い一皿になります。焼き料理は、猪肉の魅力を存分に楽しめる調理法です。
猪肉の保存方法と注意点

猪肉の保存方法と注意点を紹介します。
冷蔵・冷凍保存方法
猪肉を適切に保存すれば、鮮度を保ち、長くおいしく楽しめます。保存方法は冷蔵と冷凍の2種類です。冷蔵の場合は0~4℃で保存し、2~3日以内に消費してください。冷凍は、-18℃以下で1~3か月保存が可能です。空気に触れないようにすると、鮮度が保てます。小分けにすると解凍時に便利です。
ラベル管理や食品の分別保存は、交差汚染を防ぐ重要な対策です。長期保存では、脂肪の酸化を防ぐためラップで二重に包みましょう。解凍後は再冷凍を避け、速やかに調理することが大切です。猪肉の鮮度と品質を維持し、安全においしく楽しめます。
保存する際の注意点
猪肉を適切に保存するには、温度管理が重要です。冷凍する場合は-18℃以下、冷蔵する場合は4℃以下を保ちましょう。空気との接触を最小限に抑えることも大切です。脱水シートやラップで包み、乾燥や酸化を防ぎましょう。保存期間にも注意が必要です。冷凍は3か月以内に使用しましょう。
解凍した肉は再冷凍せず、使い切るようにしてください。衛生管理も欠かせません。生肉は他の食品と分けて保存し、清潔な容器を使用しましょう。ラベルに日付や内容を記入すると管理がしやすくなります。解凍は冷蔵庫内でゆっくり行いましょう。急激な温度変化は肉質を損なうため、常温や電子レンジでの解凍は避けましょう。
猪肉を使ったおいしいレシピ

猪肉を使ったおいしいレシピは以下のとおりです。
- ぼたん鍋
- 猪肉の角煮
- 赤ワイン煮込み
ぼたん鍋
ぼたん鍋は、冬に楽しめる伝統的な鍋料理です。猪肉を主材料に、野菜や豆腐を加えて煮込むことで、風味豊かで栄養価の高い一品に仕上がります。一般的にしょうゆベースの味付けが多く、生姜やネギを使って臭みを抑えます。猪肉は薄切りにし、柔らかくなるまで煮込みましょう。
猪肉にはタンパク質や鉄分が豊富で、栄養価の高い料理として知られています。猪肉のうまみと野菜の甘みが調和し、バランスの取れた味わいが楽しめます。地域によって具材や調理法が異なり、土地ならではの食文化を体験できるのも魅力です。締めに、うどんやそばを入れるのも定番で、さまざまな食べ方を楽しめます。
アウトドア料理としても人気があり、キャンプで作ると自然を感じながら味わえます。
猪肉の角煮

猪肉の角煮は、豚肉とは異なる独特の風味と食感が楽しめる料理です。臭みを抑え、柔らかく仕上げましょう。臭みを抑える際は、下茹でしましょう。しょうゆや酒、砂糖、みりんを基本に、五香粉や八角、ニンニクなどの香辛料を加えると、香り豊かになります。
時短かつ、柔らかく仕上げるには、圧力鍋を使用すると便利です。ロース肉やモモ肉を使うと、脂身と赤身のバランスが取れます。圧力鍋の圧が降りたら、煮汁を適度に煮詰めて味を調整します。表面を香ばしくしたい場合は、最後にフライパンで短時間焼きましょう。調理後は十分に冷まし、好みの大きさにカットしてください。
ルーローハンにアレンジしたり、サンドイッチの具材にも合います。冷蔵で3〜4日、冷凍なら1か月保存ができます。猪肉の角煮は、鉄分やビタミンB群が豊富で、栄養価の面でもうれしい一品です。
赤ワイン煮込み
赤ワイン煮込みは、猪肉のうまみを引き出す料理です。猪肉と赤ワインの相性は抜群で、深みのある味わいが楽しめます。おいしく食べる手順は以下のとおりです。
- 猪肉を強火で焼き、香ばしさを引き出す
- 渋めの赤ワインを使用する
- 玉ねぎやセロリとともに煮込む
- トマトペーストやブイヨンを加え、コクを深める
- ローリエ、タイム、ローズマリーで香りをつける
- 煮込み時間は2〜3時間を目安にする
- 仕上げにバターを加え、さらにコクを出す
余った料理は一晩寝かせると味がなじみ、おいしくなります。
まとめ

猪肉は、独特の風味と高い栄養価を持つ魅力的な食材です。適切な下処理と調理法を知れば、おいしく安全に楽しめます。臭みを抑え、柔らかく仕上げることで、本来のおいしさを引き出しましょう。和洋中を問わず多様な調理法に適しており、さまざまなレシピで活用が可能です。
持続可能な食材としても注目され、環境に配慮した食生活を心がける方にもおすすめです。
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